焼き鳥に関するいろいろな論文・報告


【目次】
トライアスロン競技中に焼き鳥を食うものか?
全国「焼き鳥のまち」勢力分布図を解読する。
新ジャンル焼き鳥文学を趣味にしてみませんか?
福島焼き鳥党という政党ができたらしい
ショッカーが語る焼き鳥における内臓肉について
ふしぎな焼き鳥
史上最強の家庭的焼鳥屋、村上屋支店に焼き鳥の原点を見た。

▼トライアスロン競技中に焼き鳥を食うものか?

 「トライアスロン」と「焼き鳥」をお見合いさせてみたのである。かたやスポーツの中でも特に過酷と言われるトライアスロン。かたやコップ酒にグチが似合うを焼き鳥。果てしなくありえなさそうな組み合わせといえる。

 出会いの場は今年で十九回目を迎えた福島市の「阿武隈川トライアスロンINフルーツ王国福島」。コース上に設けられる選手用給水所に、焼き鳥を置いて食べていただこうという企画なのである。給水所にバナナやチョコレートを置くことはあるが、「焼き鳥なんぞ断じて見たことはない」とある関係者は語る。

 この大会は福島中央市民プールで水泳、阿武隈川のサイクリングロードで自転車・マラソン、の計三競技行なうもので、最後のマラソンコースに三箇所ある給水所のひとつを使う。場所は舟場町、松令橋のちょっと北。
正式競技距離(計五一.五キロ)を競う「一般の部」の一〇五名の選手が往路、復路で計二回この給水所を通過し、半分の距離の「ビギナーの部」七十一名はこの給水所が丁度折り返し箇所になるので機会は一度。一般の部一〇五×二回、ビギナーの部七十一×一回で計二八一回、選手は焼き鳥を食べる機会があるということになる。これはかなり興味深いデータになるぞ。

 給水所であるから、大会実行委員会が準備された基本支給物(水、氷、スポーツドリンク)がまず大事で、別に焼き鳥をテーブルの上に並べる。目立つように「福島焼き鳥党」のノボリを掲げてある。

 さて、その結果でありますが。

 一般の部、ゼロ。往復二一〇回の機会がありながら、一人として焼き鳥を食べる人はいなかった。

 ビギナーの部、なんと九名!十二.七パーセントの確立で焼き鳥を食べたことにある。選手のゼッケンナンバーからこの九名について詳しい調査をしたところ、次のようなことが分かった。

 食べた人はみんな最終順位が下の方であった。七十一名中、焼き鳥を食べた中で一番上位が四十六位で、以下五十六位〜最下位までに残りの顔ぶれが揃っている。さらに調べると、食べた人のほとんどは福島焼き鳥党となんらかの関係のある人であった。

 要するに、特に急ぐでもないし、知った顔が焼き鳥を並べて応援しているから食うか、ということで食べたのである。ということでご想像のとおり、焼き鳥とトライアスロンは、やっぱりあまり深い関係にはならないでありましょう。(詳しくは党ホームページで


▼全国「焼き鳥のまち」勢力分布図を解読する。

 全国各市町村は「まちづくり」をするのに何らかのテーマを模索し設定する。そのテーマは「星」であったり「鮎」であったり「マンガ」「餃子」であったりする。そして当然のごとく「焼き鳥」をテーマに「焼き鳥のまち」を展開しているところがある。

 誰が決めたのか定かでないが「日本三大焼き鳥のまち」というのがある。北海道室蘭市、埼玉県東松山市、愛媛県今治市がこれにあたる。それぞれの特徴を以下に記す。

室蘭市●「豚肉」「たまねぎ」「洋がらし」という組み合わせ。「焼き鳥大使」を任命したり、「焼き鳥ソング」を何曲も作るなど地元の活動も活発。

東松山市●豚カシラ肉と辛味の効いた「みそだれ」が特徴。市内四十一店舗が加盟する「東松山焼き鳥組合」が存在する。商工会青年部が「東松山やきとり音頭」を自作、CD化。

今治市●鉄板の上で野菜と一緒に鶏肉を焼く特殊スタイル。「今治ヤキトリ飲料組合」が結成され、「やきとり天国」という情報誌やCDも作った。仕掛け人の土井中照氏は「焼き鳥文化研究」の第一人者として有名である。

   * * * *

 三大焼き鳥のまちの中に、「鳥の串の炭焼き」というオーソドックスなスタイルがない、というのが興味深い。この三大まちに数年前から福島市も、当「突刊福島の焼き鳥」と「福島焼き鳥党」という武器(?!)でやんわりと攻め入ったところであった。
 だが今年になって福岡県久留米市が突如ここに参戦してきた。インターネットタウンページに掲載された「焼き鳥屋」の人口比の店舗数(7.46軒/一万人)が日本一だった!という宣言とともに鳴り物入りの登場であった。「焼き鳥サミット」で日本一宣言をし、「久留米焼き鳥マップ」、オリジナル曲「焼き鳥ブギ」のCD化、日本酒「焼き鳥日本一の酒」発表、などなど派手な活動を展開しているところだ。

 ちなみに他の人口比の店舗数は前日本一の東松山市が7.2軒、室蘭6.3軒、今治5.0軒となっており、福島市はわずか1.5軒・・・(だってタウンページの焼き鳥屋に登録されてる店がエラク少ないんだもん)。

 実は久留米焼き鳥活動の首謀者、及び今治市の首謀者と、われわれは仲良くしメール交換なんぞしているのだ。いずれ「全国焼き鳥サミット」を開催しよう計画している両者に、その際は末席に福島も混ぜてねっ、てシッポふりふりお願いしているところである。(各焼き鳥のまちのホームページ、情報は当ホームページからリンクできます。)


新ジャンル焼き鳥文学を趣味にしてみませんか?

 「焼き鳥を食べる」という行為には少し哀愁があるような気がしませんか。たとえば焼肉や寿司を食べにいく気分と比較してみるとちょっとオモムキが違うのが分かる。人は少し憂いを含んで焼き鳥を食べるのではないだろうか。「富士には月見草がよく似合う」と言ったのは太宰治だが、「焼き鳥には愚痴(グチ)がよく似合う」と言ったのは芥川龍之介ではなかったか(なかったはずだ)。

 明るく生き生きと食べる、よりもグズグズ食べるのが焼き鳥、というイメージがある。

 福島市内のある焼き鳥屋のカウンターの上の壁に短冊型の紙がずらりと貼ってあり、それぞれに手書きの文が書きなぐられていた。店のママに聞いてみると、昔来ていたお客が書いていったものだということで、確かに長年煙でいぶされた色をしている。そしてその文は面白く、味わいがあった。

・人は人 俺は俺 焼き鳥は焼き鳥

・初恋・酒飲み十八年、そして父は天国へ

・結婚した者は必ず後悔する 結婚しなかった者は一生後悔する

といった、なんだかいかにも焼き鳥をつつきながらぽろりと出たつぶやきのようで心に響いた。川柳ともちがう、コピーともいえない、しかしただのタワ言でもない、独特の味わいである。酔った勢いでぽろりと出た五七七の規制もない自由詩・・・。

このような文を「焼き鳥文学」と称してみようじゃないかということになった。

 今年結成された「福島焼き鳥党」という集団がこの「焼き鳥文学」の啓蒙を図ろうと、三月中旬に立ち上がったホームページで作品を募集し、六月末には四十二もの作品が集まり、なかなかいい作品もそろったのでとりあえず上半期の文学大賞を決めようということになった。電子メールを利用した国内の焼き鳥専門家数名による一次審査を経て、焼き鳥文学の発祥の地である焼き鳥屋で最終審査を開催した。

 そして二〇〇二年上半期大賞が決定した。

食べ終えた串であなたの名前を書いてみる  (作/天狗舞)

 漂う哀愁、小道具(串)の巧みな使い方、「焼き鳥文学」の名に恥じない堂々たる名作!と満場一致の大賞であった。

 いずれ全国的にブームになり、NHKの趣味講座「焼き鳥文学」放映開始、なんてことになったらいいなあ。

 履歴書で趣味の欄に「なし」なんて書いてしまうような方、ここは一念発起して「焼き鳥文学」作りを趣味にしてより充実した毎日を過ごしてみてはいかがでしょう。


福島焼き鳥党という政党ができたらしい

 昨年末12月20日に当紙の呼びかけで開催された「第1回焼き鳥会議」は、「一般市民の方が何十人も来たらどうしよう」という不安が全く必要なかったほど誰も来なかった。

 まあ別にそれはそれでいいじゃない、ということで関係者のみ約15名が別紙に掲載した「やきとりの酒」を飲みながら楽しく焼き鳥を食べ始めた。実はこの席で、当紙がやっている焼き鳥談義、焼き鳥遊びを一緒にやっていくグループを作ってしまおうという計画になっていたのであった。

 「酒」は恐いものである。ついつい飲み進んでいるうちにその話題はあやしげな路線に突き進み、「どうせ団体にするなら最終的には市長、いや総理大臣を輩出できるような『政党』にすべきだ」ということになってしまい、「福島焼き鳥党」として結成されることになったのだ。

 党といえば党首が必要である。

 席の中にひとりの女性がいる。「突刊福島の焼き鳥」第一串を読んで感想のお手紙を下さり、第二串の企画「人間はいったい何本焼き鳥を食えるか?」に出場し38本の焼き鳥を食べたツワモノ・K子さんである。初めてお会いした時に、「この人は焼き鳥と似合わないのではないか」と思ったほどの美人だが、焼き鳥を食べると奔放な笑いで人々を惹きつけてしまう。

 田中真紀子人気に代表されるように女性の時代である。われわれはK子さんに党首就任をお願いした。焼き鳥新時代はこのような美女がリードすべきなのだ。鈴木宗男氏の説得もあり(ウソウソ)、K子さんが党首に就任した。そして幹事長にこの文を書いている私が決まった。

 党三役として、後は政調会長、総務会長の人事を決めなければならないのだが、美味しい焼き鳥を食べながらの飲み会はすでにこの話題は飽きており、党首による全出席者面談が始まり、あいまいのまま「焼き鳥会議」は幕を閉じた。

 党は出来、党首と幹事長だけ決まっている。しかし結局のところ誰が党員なのかがよく分からないのが現状である。

 今年に入って1月末に党首、幹事長とたぶん党員なんだろうと思われるこれまで中心的に動いていただいた方数名が某焼き鳥屋の2階に「新年会」と称して集まり、福島焼き鳥党の今後の未来について語り合った。

 まあ、大した決定事項もなく、ロゴマークが承認され(上図参照、「おでんみたい」との批判あり)、「今後もがんばっていこう」というような話であったが、盛り上がった。

 福島焼き鳥党は「右手に焼き鳥、心に花束」をモットーに(今考えたんだけど)正式党員を今後募集し、福島市内の焼き鳥屋全制覇を目指し、日夜活動することになろう。

 焼き鳥を食べながら、焼き鳥を語る、そんな仲間に入ってみませんか。


ショッカーが語る焼き鳥における内臓肉について

 私は地球征服をたくらむショッカー福島県北支部の赤戦闘員である。仕事上様々な作戦に携わっているが、「福島の焼き鳥作戦」は人の心理に効果的に作用する作戦であり、ぜひ協力したいと筆を執ったわけだ。

 私は焼き鳥とはズバリ「内臓肉(ホルモン)」にあると思っている。鳥、豚、牛問わず、である。一般的イメージの焼き鳥に使われる内臓肉はレバーやハツ、砂肝、特にホルモンというとシロモツが浮かぶ方がほとんどだろう。精肉以外の副生品すべてを可食内臓というのだが、実はこれが「ホルモン」なのだ。だから鳥皮やタン、カシラ、ハラミなども含め焼き鳥のほとんどが内臓肉・ホルモンなのである。(私も仕事で改造手術に立ち会うので覚えてしまった。)このへんを分かってない人が多い。

 この間、作戦終了後に焼き鳥で一杯やっていたら、隣でレバーやハツの匂いを嗅ぎながら嫌そうな表情で「生々しくて食べられない」と語ってる声がした。それが妙齢の女性なら許せないこともないが、見たら若いアンチャンなのだ。敵ながら情けない。昔ならあまり良くない部分を使ったり、「なんだか硬くて」ということもあったが、最近は新鮮かつ良く掃除がしてあり、精肉にはない深い味わいが楽しめるじゃないか!そして値段も安いし栄養価も高いじゃないか!ライオンやトラも獲物に対しまず腹ワタから食らいつく。フレンチ、ドイツ、中華など日本以外の国の料理などでも内臓料理は高級料理なのだ。

 ある外国人に聞いた話だが、「焼き鳥」はわが国の料理の中で唯一どの国の方にご馳走しても喜ばれる国際的ですばらしい料理なんだそうだ。牛、豚、鶏の内臓がふんだんに使われていて、シンプルかつ安い。

 ところが我々日本人ときたら、たとえば東京の「高級焼き鳥店」と呼ばれるところに行ってみると、そこはホルモンはもちろんタン、砂肝さえなかった。有名な地鶏のササミや精肉だけ。以前モツ鍋ブームがあったが、まだまだ日本食文化に「内臓肉」は根付いてないようだ。

 地球征服を企む者がこんなこと言うのもおこがましいが「内臓肉が食べられない者は国際人にあらず」と断言してしまう、私は。ちょっと過激な発言かな。

 最近あまりにも作戦が単調なので、ついストレスがたまっちゃって。とにかく、内臓のすばらしさにちょっと気づいてほしい。次に焼き鳥屋に行った際に注文してみなさい。ネギ間だけが焼き鳥ではないことが分かるはず。それでは次のS104作戦があるので、このへんで失礼します。イー!!


創刊特別文・ふしぎな焼き鳥

 焼き鳥とは不思議な食べ物である。大衆の酒のツマミとしては今の小泉内閣以上に人気があるというのに、ほとんど騒がれない食べ物なのである。外で酒を飲む時に必ず食べているというのにあまり注目されないのである。

 その証拠にインターネットで「焼き鳥」を検索してみると、ほとんど店の宣伝のページしかない。同じように大衆の味であるラーメンやカツ丼は研究や愛好家のホームページがたくさんあるというのに…。焼き鳥に関する本もない。近頃食べ物の研究本がはやりで焼肉やうどん、つい最近は「ふりかけ」の歴史を探る本まで出た。焼き鳥はというと店を開くための勉強用本の一種類しかない。

 焼き鳥を食べながら論議することはあっても、焼き鳥について議論されることはほとんどないのである。

 もうひとつの不思議に「焼き鳥」という言葉の曖昧さがある。焼き鳥といえば「鳥肉を串に刺したもの」のようだが、実際は豚肉が多いし串に刺さないものもある(この謎については本紙・試食号で徹底究明しています)。誰がつけたのか「日本三大焼き鳥のまち」は北海道室蘭市、埼玉県東松山市、愛媛県今治市なのだそうだが、このうち2カ所は豚肉の串焼きで、一カ所は鳥の鉄板焼きなのだ。ぜんぜん焼き鳥じゃないような気がする。

 安くて美味くて大衆的で、しかも前述のようなミステリアスな部分をもっている「焼き鳥」はもっと多くの議論されてしかるべきだと思う。

 われわれ編集部(福島青年会議所・福島のまちを考える委員会)はそこに着目してこのような雑紙を作ったのであります。福島市周辺にはきっと同じような思いをもっている同志がたくさんいるはずである。この「突刊 福島の焼き鳥」を中心媒体として、これまでみんながお世話になっていながらスポットが当たることの少なかった「焼き鳥」に注目し、面白おかしく議論展開していければ幸いなのでありまする。

 同志のみなさん、いざ立ち上がらん!


史上最強の家庭的焼鳥屋、村上屋支店に焼き鳥の原点を見た。

 雑誌の飲食店紹介コーナーに必ずこんな言葉を見かけるものです。

 「調理を担当するご主人の柔らかい物腰と気さくなおかみが醸し出す家庭的な雰囲気がとても居心地よいお店です」

 ふーん、店主がいい人だと「家庭的」なのですか、ふーん。

 いまどきそんな家庭などあるのでしょうか。この不況の世の中、夫は夜遅くまで残業、妻はパートで疲労して家事もままならず、子供は何を考えているか分からない。そんなもんじゃないでしょうか。

 福島市置賜町にある「村上屋支店」は有無を言わせない史上最強の家庭的焼き鳥屋であります。

 なにせ店の奥座敷は、家の「居間」なのであるのです。

 12畳のその居間には年代ものの食器棚があり、さっきまでお茶を飲んでいたという感じの茶碗やコップがある。テーブルにはなんの飾りっ気のない箸立てと灰皿、壁に地元サッカーチームの表彰状が飾られている。

 僕らが店を訪れ、その座敷に入った時の気分は「家庭的」というより「知人の家にお邪魔しました」という感じで、ビールを注文しコップをお願いすると、アサヒビールのラベル入りのコップがいかにもなにかのおまけでもらったとものを出すという雰囲気で六ケ「箱入り」で届いたのです。

 モツ煮込みのつき出しから始まるこの席は、福島の焼き鳥の生き字引とも言えるおみさんとの言葉のキャッチボールで注文を繰り返しながら、主に豚肉を中心とした焼き鳥の味を楽しませてくれます。

 昭和20年から続いているこの店の堂々たるありのままの姿は、客の心まで素直にさせてくださいます。

 庶民の味である「焼き鳥」は、ぜひともこういう雰囲気で食べたいものであります。

 

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