研究●ネギ間に代わる「間」はなにか?


「ネギ間に代わる間(ま)はなにか?」という、語呂のいい言葉がわれわれの焼き鳥談義の中に出てきた時、その場にいた全員が「それはおもしろい!」と喜んだ。半年前のまだ寒い時期であった。もちろん肉の間にネギを挟んだ焼き鳥の代表的メニュー「ネギ間」の、ネギに代わる食材を探してみよう、ということだが、そのことが「おもしろい」というよりも、多分「ネギ間に代わる間はなにか?」という言葉がとっても「おもしろい」と思ったようであった。

 みんながアイデアを出し始める。「レンコン挟んで『ノゾキ間』ってのはどうだ?」「鳥肉の間に豚肉で『トン間』とか…」「鯛を挟んで『タイマ』なんていいぞ」と、お酒が入っているせいかバカバカしいネーミングにばかり視点がいく。そんな中でも「キムチを挟んでコオリヤマ(キムチ→韓国→コリアン→コオリヤ間)ということです」」というのはなかなかの傑作ネーミングであった。

 これはかなりおもしろそうだということで正式に本紙の企画とすることになり、アイデアを募集することにした。焼き鳥屋での集会で参加者にお願いし、間もなく完成した「福島焼き鳥党」ホームページに募集記事を掲載。しかしこういうバカバカしいことは待っていてはまとまらないもので、気がつくと梅雨の時期になっていた。これではいかん、と突如6月19日(水)8時頃集合という号令が発せられ、各自これぞと思う食材を持って福島市内の某焼き鳥屋に集うことになった。

12種類の食材が「間」に挑む

 当日集った顔ぶれは福島青年会議所から3名、福島焼き鳥党の党首及び党三役の計7名。集った食材は12種類。なるほどと思うものから勘違い的なものまでずらり。

 本来ならば全種類を全員分作って試食すればいいのだが、今回協力いただいている店は貸切っているわけではなく、またママさん一人でやっている店なのであまり負担をかけてはご迷惑をかける、ということで各種二〜三本焼いて代表者が食べ、「これは!」というのを推薦して最後に何種かを全員で食べてみることにした。

 さっそく鳥肉の間に各食材を挟んで串に刺し、店で焼いていただいたものをそれぞれ2、3人が食べてみる。

 まずはパイナップル。こういうのを持ってくる人、クラスに必ずいるんですよね。いつもウケ狙いなんだけど必ずはずすんですよね。うまくいったら「南のシ間(マ)」というネーミングが用意されているのが恥ずかしい。感想―「酢のない酢豚って感じだな」。たしかにそうだった。予選一回戦コールドゲームで敗退!であった。

 レンコン。『ノゾキ間』である。焼いてみるとなんだか干乾びてしまったみたいだ。感想―「うーん、なにもなし」。鳥とレンコンは煮込んだ方がおいしい。敗退。

 ウズラの卵。おー、これはいけそうじゃないか。こいつはニワトリとウズラの関係からいって「仲間(なかま)」という名称が正しい。あらかじめ茹でておいたウズラの卵を鳥の間に挟み焼いていただく。感想―「そっけない味…」。「仲間」なのにそっけない味とは。ニワトリとウズラは最近ケンカでもしたのではなかろうか。

 ハイ、次。意外なところでチーズ入りカマボコ。きっと「チーカ間」って言いたいんだよねえ。感想―「結構いいいいじゃない。いけるよこれ」とのこと。「でも肉の味が負けちゃうな」と追加発言。串に刺して鳥と共に焼いてできたおいしさではなく、チーカマを焼くと結構いい味だ、ってことのようだ。惜敗ってとこでしょうか。

 ニンニクの芽。感想「うまいよこれは」。ニンニクのほのかな香りが肉を包み込む。一回戦突破といえよう。自然に食べられ。

 ゴーヤー。そう、沖縄の味、ニガウリだ。ゴーヤー間、なんて名前もなかなかいい。濃いグリーンの色合いもやさしい。あとはあの独特のにがさに対する趣味の問題である。感想Aが「にがい(あたりまえじゃないか!)。口の中で肉と混ざるまでがツライ」と、8割以上の否定をしたところ、後から手を付けた福島焼き鳥党・党首K子さんが「いや、これはいい。気に入ったわよ」と発言。ゴーヤーに対する認識の違いである。そして「この味は大人の味なのよ。だから子供には分からないかもねえ」とあやしい眼差しで感想Aを見つめるのであった。

 エリンギ。そう、あのキノコの仲間。こりゃいかにもうまそうな感じするぞ。感想―「サイコーですねえ。思わず追加の注文したくなるね」とのこと。味は想像通り。

 エシャレット。らっきょうとにんにくの合いの子みたいなやつですね。塩で焼いたところ、感想―「味噌で焼いたらおいしいんじゃないかな。塩だと一緒に焼く必要を感じないな」とのこと。悪くはなかったぞ。

 こんにゃく。これはダメでしょ。こんにゃくと鳥肉はやっぱりレンコンと共に煮物にしてほしい。そうするとご飯が欲しくなるぞ。ま、せっかくだからタレでお願いした。感想―「うまいじゃないですか!いける。あっさり系焼き鳥だ」。評価高い。
 はんぺん。焼きあがるとこげ具合がいい感じである。一緒に口の中に含むとふわっとしたはんぺんと鳥肉の歯ごたえのギャップが意外に「いける」のであった。

 ぎんなん。これはちょっと想像し難かったのだが、食べてみるとすんなりと鳥肉に合って「いいですねえ」という感想であった。あんまりにもすんなりと食べられるので「意外性に乏しい」という辛い評価もあった。

 最後に登場はプチトマト。実は最初の方に食べたのだが、あえて最後に登場である。こういう言い方をするとすべてバレてしまうので先に告白するが、これは衝撃的なおいしさであった。先のぎんなんはおいしいのに意外性の乏しさを指摘されたが、これは意外性満点な味である。全員が絶賛した。

ネギ間に代わる「間」はこれだ!

 まず、焼く前に切る手間がいらない、という大きさからしてよい。そのまま鳥肉と交互にして串に刺せばよい。焼きあがったのを見ると色は鮮やかでいいのだが、ちょっと不安がよぎる。焼きトマト、というのにあまり慣れていないからである。勇気を持ってこれを口に入れる。ここでは鳥肉とトマトの一セットを一緒に口に含まねばならない。熱いトマトに歯を立てるとプチッという歯ごたえでさらに熱い汁が口の中に広がる。トマト汁が鳥肉をどっと包み込み、これが味といい感触といい実に合うのだ。鳥肉に一目ぼれしたトマトが突然うわっと抱きついてしまったという感じがする。他の食材の場合、うまい、と思っても特にわざわざ焼き鳥にする必然性があるか、といえばやや疑問がある。だがこの熱いトマトの汁が鳥肉に抱きつく、というのは串に刺してこその必然性のあるおいしさである。それに名前もいいじゃないですか。トマト間。トマトマ。とまとま。なんかモーニング娘みたいじゃないですか(?)。

 われらはもう強い確信を持った。「ネギ間に代わる間は、『トマト間』だ!」。 考えてみるとイタリア料理などではトマトと鳥肉の組み合わせは結構ある。だがこれを焼き鳥でやっちゃうっていうのは文化革命的でよろしい。

 そのような盛り上がりを見せ始めた頃、集った七名はすっかり酔っ払ってしまっていた。だらしなくなっていた。優勝候補何種かをもう一度試すはずであったが、「いいよ、トマト間がダントツだ」「そうだよ。あれだけの衝撃の味は他にない、決まり。さあ飲も飲も」とあっさりと結論を出してしまったのだった。

 エリンギやはんぺん、ぎんなん等もかなりよかった。ただ、とにかくあの「プチッという食感」「熱いまま鳥肉に抱きつくトマト汁」という衝撃性、意外性が群を抜いていたのはまぎれもない事実。

 今後この「トマト間」を全国に普及すべくわれわれも宣伝活動に動いていきたいものである。

 読んで下さったみなさん、ぜひとも自宅で一度お試しください。本当においしいです。

 

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